プロジェクトの概要
研究分野

 血管新生に関連した疾病(腫瘍と糖尿病性網膜症)に対するターゲット・バリデーションと予防的及び先端的創薬研究

研究内容

 申請者の一人は、cDNA subtraction 法を用いて糖尿病動物の血管内皮細胞障害に直接関連する新規遺伝子4個確認しているが、経済的理由により蛋白質の同定までに至っていない。本プロジェクトでは、この研究を更に進展させ、これら新規遺伝子の蛋白質の同定まで進展させると同時に網膜症初期における血管新生に関する新規遺伝子を cDNA subtraction 法、cDNAマイクロアレイを用いてターゲット・バリデーションを行い、糖尿病網膜症に対する創薬のターゲットを探索する。上記した新規遺伝子あるいはドミナントネガティブを封入した脂質微粒子製剤を投与し、血管新生の増減について検討する。

 近年,腫瘍組織に浸潤する間質細胞,特にマクロファージ系細胞(腫瘍関連マクロファージ:TAM)が産生する増殖因子・サイトカインが腫瘍組織での血管新生を促進させることが注目されている。本研究では,浸潤した単球/マクロファージが TAMに分化する機序および TAM が活性化され産生する血管新生促進性サイトカインを同定し,これらを制御する方策を探索する。抗癌作用を有し血管新生を制御 (抑制・促進) する。抗癌作用を有し血管新生を制御 (抑制・促進) するレチノイン酸 (RA) と上記した新規遺伝子及び蛋白質との相互作用について研究する。過度の血管新生は、癌、糖尿病性網膜症、リウマチ様関節炎などの疾病と深い関係にある。また、固形腫瘍においては、酸素・栄養を供給するための新生血管が必要である。本研究では、伝承薬用植物資源を素材として、血管内皮細胞の増殖阻害作用および腫瘍から分泌される血管内皮増殖因子によって誘導される血管新生過程を阻害する新しい抗腫瘍物質の探索を目指す。

 腫瘍の成長や糖尿病網膜症における血管新生に関わる新規な遺伝子並びに蛋白質を指標として血管新生の阻害作用を有するリード化合物としての新規生理活性物質の探索、さらに最適化による治療候補化合物の創製を行う。更に、サリドマイドをリード化合物として、構造の単純化、及び各種置換基の導入による誘導体合成を行い、これら化合物の評価実験から血管新生を抑制する化合物を探索する。また、真菌類(カビやキノコ)由来の新規血管新生阻害物質を探索する。

達成目標

@   血管新生に対する治療戦略においてターゲット・バリデーションを行い、創薬のターゲットを探索する。また、糖尿病病態時の血管内皮細胞細胞の機能障害に関与する新規遺伝子の蛋白構造を決定すると共にその転写因子も明らかにすると共に、更に糖尿病網膜症に関与する新規遺伝子と血管新生との関連を明らかにする。

A   新規遺伝子あるいは自殺遺伝子を封入した癌新生血管標的脂質微粒子を開発し、in vivoで癌細胞の増殖を抑制する。

B   単球/マクロファージと腫瘍細胞の相互作用に関わるサイトカインおよび接着分子を同定し,腫瘍関連マクロファージの活性化により誘導されるサイトカイン・増殖因子を明らかにする。また,これらの分子の機能を評価するシステムを構築する。

C 血管新生において RAと相互作用 (結合) する標的蛋白質を見出し、RA蛋白質修飾を介した遺伝子発現調節機構を解明し、RA に代わる副作用のない強力な抗癌剤 (抗血管新生剤) を開発する。

D 血管内皮細胞は、パラクリン作用によって腫瘍から分泌されるVEGF(血管内皮増殖因子)などに応答し、遊走・増殖・管腔形成などが促進される。この VEGF によって誘導される血管新生過程を阻害する新規低分子化合物は、血管新生阻害療法のリード化合物として有用であるだけでなく、複雑な血管新生過程を解析するための有用なバイオプローブになりうる。

E 天然界からは既に fumagilin, squalamine, epoxyquinol, bastadin 等の血管新生阻害作用を有する生理活性が単離されている。リード化合物の探索においては、これら既存の化合物並びに新規な骨格を有する化合物を含めて検討する。さらに、リード化合物の最適化を行うことで新規な血管新生阻害剤の開発を進める。

F 真菌類から新規の血管新生阻害物質を探索する。

期待される効果

@ 既に4個の新規遺伝子が候補に挙がっているので、この蛋白質の構造を明らかにすると共に、この蛋白質の機能を修飾することによる創薬が期待される。また、本プロジェクトの予算によって従来の研究を発展させ、糖尿病網膜症関連の血管新生に関与する新規遺伝子の探索も可能である。

A 腫瘍組織の血管形成において間質細胞の重要性が指摘され始めているが,詳細については不明の点が多い。これらの過程を制御する薬物は,腫瘍組織特異的な血管新生を阻害する新たな抗がん薬となる可能性が高い。

B RA核内受容体とは全く異なる視点に立った新しい作用機構に基づく新規抗癌剤 (抗血管新生剤) を創製し、得られた知見・新薬は他の多くの難治疾病の治療にも貢献する。

C 新しいタイプの血管新生阻害療法のリード化合物を開発することができれば、従来の抗癌剤では太刀打ちできなかった難治性の癌への適用や、効果の持続性が増強したことによる抗癌剤の投与量の減少とそれに伴う副作用の軽減などが可能となり、癌化学療法の適用範囲の拡大や、治療効果の改善、癌患者のQOLの向上などが期待される。

D 一方、血管新生促進剤の開発も可能となれば、下肢の壊疽、心筋梗塞、脳梗塞などの血管再生療法に結びつくものと期待される。両面から探索したい。

E 真菌類は種々の化合物を含むことから、独自の観点から新規血管新生阻害薬が見出される。

当該研究を通じた人材養成の内容及び方法

 研究成果を効率よく社会に還元するため、本事業の一環として『オープン・リサーチ推進室』を設け、研究成果をデータベース化してホームページ等で公開し、また、関連分野で協力可能な団体・組織を募り、産学官連携により創薬の実現を目指す。

 本事業では、本学学部学生および大学院生の教育・指導はもとより、PD, RA, 外国人研究員、さらには企業からの研究員等も研究分担者として受け入れ、医療・創薬分野における高度専門職業人の養成や我国における将来的な国際競争に耐えうる高度な専門研究者を養成することにより社会に貢献する。

 また、インドネシアを始めとする発展途上国に対する研究者等の人材育成は医療に関するグローバル化を考慮したとき必須の事柄であり、これにも本事業を通して貢献することを目的とする。本事業で得られた成果は国内外の学会で発表すると共に、学術論文として専門学術誌上に積極的に公表し、また関連分野に関するシンポジウムや一般市民を対象とした公開講座等も開催して最新情報をわかりやすく社会に提供する。

学術資料、研究成果等の公開方法

研究成果は国内外の学会で発表すると共に、学術論文として国内外の専門学術誌及びその他雑誌等にも積極的に公表する。また、成果は、可能な限りデータベース化し原則的にホームページ上で開示する。さらに、薬学関係者のみでなく一般市民をも対象とした公開講座等も開催し、医薬に関する最新情報を分かりやすく広く社会に提供する。